トーク・エッセイ

フリスビードッグにあこがれたフリスバーたち
三本華余子(みつもとかよこ)&カイザーの巻


グリップ(内側)

 初めて犬を飼ったのは、小学校1年生の時。「この犬いりませんか?」と、小学校中学年くらいだったと思いますが、捨て犬を抱いて近所の公園へやって来た人に、話しかけられました。その犬を友達と代わる代わる抱かせてもらっているうちに、可愛くなり家に連れて帰ったのがきっかけでした。両親とは捨て犬の里親が見つかるまでという約束で、家で面倒を見ることになったのですが、一緒に過ごしてみると愛情が湧くもので、結局我が家のペットとして暮らすことになりました。その頃の愛犬との付き合いは、ドッグスポーツをする訳でもなくただ散歩に行き、一緒に遊ぶだけでしたが、もともと犬好きで、それ以前も近所の家の犬を散歩させてもらったりしていたので、自分の家で犬を飼えると決まったときは、とてもうれしかったです。
 現在パートナー・ドッグのカイザーはボーダー・コリーなんですが、両親犬ともJFAの大会に出場していて、その子犬達もフリスビーのできる環境におきたいという親元(ブリーダー)の強い要望があり、カイザーにフリスビーをさせることを条件に、親元から譲ってもらいました。それが、カイザーとの出会いであり、フリスビードッグを始める切っ掛けにもなりました。

 カイザーは今年5歳になりますが、フリスビーを始めたのはカイザーが9ヶ月の頃。初めから、フリスピーに興味は持っていたものの、河川敷で鳥を追ったり、通過する電車を線路下で追いかけて行ったりと、問題点が多くありました。その上、投げ手の方も単調なスローの繰り返しです。しかも、1ラウンドに何投もしていたため、カイザーが集中力を欠いてしまい、練習最中にまったく意欲がなくなってしまうことも少なくありませんでした。
 そんな失敗に対し三本欽麗選手より助言を受けました。カイザーの欲出しをし、短い距離で速いディスクや低いディスクを投げるなど、変化に富んだスローをすることで、ディスクに集中させるようにしました。まァ、これは今でも主に、三本欽麗選手が担当してくれているんですが・・・。そして、カイザーが飽きる前の欲の高いうちに練習を終わらせ、次回の練習に繋げていきました。これらのことは最初の頃だけでなく、現在の練習でも不可欠な要素と考え、日頃から続けています。

 というと順調のようですが、カイザーの問題点が徐々に解決しているのを横目に、私のスローの方はというと・・・。相変わらずまっすぐに飛ばせず、ろくに距離も出ない超ヘナチョコ・スローのままでした。こんなスローではカイザーにタイミングをあわせることもできないし、無理な体勢のキャッチでカイザーが、ケガをしまう危険もありえますから、ヒトだけのスローイング練習の必要性を強く感じるようになりました。
 そこでまずは、週3回程度近所の公園で看板を標的に投げることから始めました。標的に対し身体は横を向き、ディスクは地面と平行になるように持って、この頃は手首のスピンをうまく利かせられませんでしたから、胸の前で腕にディスクを巻き込んで投げていました。もちろん、ステップはナシです。初めは一、二メートルくらい離れたところから標的に当てるのが精一杯でしたが、練習を重ねていくうちに手首のスピンを利かせたり、体重移動ができるようになりました。ディスクに力が伝わるようになっていき、距離も徐々に伸びていきました。
 練習の成果が現れ出してからは、毎日仕事から帰ると公園で練習をするようになっていました。今思うと、『練習』というよりほとんど『義務』のような・・・。とにかく夢中で、必死になって練習していました。そんなこんなで、なんとか大会デビューを果たしましたが、早いものでフリスバー生活も4年目になりました。
 スローイングでは、距離を飛ばすことよりも、確実にコートの真ん中へ投げられるように練習しています。まだまだ未熟ですが、特にフリスビードッグを始めた頃は、コントロールの悪いスローでカイザーに危険なキャッチをさせてしまうことが多かったので、手首のスピンを利かせ、どんな向きの風にも対応できるようになることで、犬への負担をできるだけ少なくできたらと思っています。

 それから、大会に出場するために、カイザーのケアにも注意していることがあります。以前、前足を捻挫させてしまった時、充分休養させて完治したと思いフリスビーの練習を再開すると、2・3投目で前足の運びのリズムが乱れ、結局捻挫を長引かせてしまったことがありました。そのことがあってから、ディスクを追って、キャッチして戻ってくるという、フリスビードッグの一連の動作は、ヒトが思う以上に犬にとってハードなスポーツなのだと認織しました。それ以来、カイザーが安全に楽しくフリスビーをしていけるように、できる限りのサポートを心がけています。寒い時期は特に、足腰の関節や筋肉が硬くなり、ケガのリスクも高いため、フリスビーをする前には必ず歩かせ、身体を暖め筋肉を充分ほぐしてから始めています。また、カイザーは垂直にジャンプするため、着地の際の後足や腰への負担はかなり大きいと考えられます。その負担を軽減するために、毎晩手足の屈伸と腰のマッサージをしています。

 食餌に関しても、カイザーはフードの量や内容に影響を受けやすい体質だったため、3歳までパピー(仔犬用)、アダルト(成犬用)、ライト(肥満犬用)の3種を調節し、ウエイトコントロールをしていました。4歳を過ぎてから、体重の減りが極度に緩やかになったため、現在はアダルトとライトの2種を与えています。シーズンオフは練習内容を軽くしますから、運動量が減ったため、太ってしまわないように繊維質の多いライトの量を増やし、シーズンオンでは、練習量と比例させてたんぱく質の多いアダルトを徐々に増やすというように、シーズンオンとオフでフードの内容を変えています。
 水は自宅ではいつでも、カイザーが自由に飲めるようにしてあります。でも、普段の練習の時もそうなんですが、競技会場ではフリスビードッグのパフォーマンスに集中させたいので、必ずラウンド間の休憩時や終了時に、水を与えています。ただ、休憩時に多量に水を飲んでしまうと、次のラウンド時に戻すことがあるので、飲みすぎないようストツプをかけるようにはしています。

 以前は仕事で帰りが遅くなることが多かったのですが、カイザーと一緒に過ごす時間が長くとれるようになってから、フリスビードッグのチームとしての息が合ってきたように思います。何をするという訳ではなく、ただ同じ時間を共有することで、無意識に存在を認め合い、より深い信頼関係が作りだされたのだと思います。フリスピードッグに限らず、カイザーと暮らしていく中で、『ただ一緒に居るだけ』は大切なコミュニケーションの一つです。
 フリスビードグでは、コマンドも使っていますけれど、私とカイザーの場合、こうした何気ない時間を下地にした上でのコマンドなんだと思っています。基本的には『レディ』、『ゴー』、『ディスク』、『キャッチ』、『来い』、『持って来い』、『出せ』を使います。このほか、カイザーがディスクを見失ったりしたら、探させなければなりませんから、その時は『右』、『左』、『後ろ』と、スタート方向から声を掛けます。理解しているのか偶然なのか一応その方向を探します(爆)。
 これから先もずっと、カイザーと健康で楽しくフリスピーを続けていけたらいいな−と、思っています。私とカイザーのチームには、『楽しくブリスビーをする』ということが大前提にありますけど、その結果として、今年もジャパンファイナルに出場できたらうれしいです。 ☆ENJOY FRISBEE!!☆
(取材日:2003年1月11日)

上から見たところ
■スローイングスタイル

ティクバックからフォワードスイングへ

フォロースルー

フィニッシュ


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