霧ヶ峰高原IPO研修会から

この研修会の内容は’98年にFCI−IPOWCH派遣選考会が行われた翌日に、
JKC主催により開催されたものの要約の一部です。


防衛作業
禁足から側面護送へ




防衛作業
咬捕し逃走阻止



足跡追及
着実に臭いを嗅ぎながらスタート




防衛作業/パトロール



服従作業
障害往復飛越ダンベル持来


防衛作業/禁足




服従作業
紐無し脚側行進


世界的な傾向に基づく訓練の考え方

 長野県・霧が峰高原においてハンス・ルーデナウアー氏、ベルナー・プレゥガー氏を講師にむかえIPO研修会が開催されました。
 ハンス・ルーデナウア−氏は講習会に先立って、昨日の選考会の短評を述べ、研修会は選考会の模様から気がついたIPO/WUSV出場のための注意事項などを始め、世界的な傾向に基づく訓練の考え方について解説がなされました。


●印跡のスタート地点の心構えについて
『印跡のスタート地点で、日本ではこれまでピンを指導手の右に立てていました。規定には現在明記されていませんが、世界ルールとしてピンは指導手の左に立て、三〇から五〇センチ離れた地点からスタートしているのが現状です。逆からスタートしているのは日本だけなので、将来的なことを考え早くスタート方法を変えたほうが良いでしょう。また、スタート切る時に、犬が少しでも指導手の思いよりスピードが速いと感じると、犬を止めているのを見かけますが、犬のスピードで行かせてコントロールするようにして、犬の意欲を壊さないようにしてください』

●追及のパターン
『最初のコーナーで右屈折が得意な犬などという犬がいると思いますが、訓練の際に左右の屈折を取り入れて沢山練習し、本番で犬にストレスが掛からないようにします。追及はあくまで鼻で行うものだということを忘れないでください。第四コ−ナ−は本来スタ−ト地点(ゴール)に向かうものですが、練習では敢えて内側へ向かうようなことも取り入れて、練習することを考えてください。犬が鼻を使わないで、突っ走ってしまうような習性をつけさせないようにし、犬が習慣で進まないように訓練します。犬を前に行かせ屈折点にくると、指導手が不安になりリードを無意識に操作してしまっている光景もみかけました。犬が指導手を導くのだということを肝に銘じ、犬に任せることを大切に考えて下さい』

●物品発見・再スタート
『犬へのコマンドがズレると減点になります。犬は練習などで慣れているので、コマンド無しでもスタートする傾向がみられます。追及ではコンスタントに適度な速さで犬を導く必要があります。リードを張ったりすれば誘導と見做され勝ちですから、スタートからゴールまで一定の速さで進むことが理想です。犬の性格を指導手が読み取って、(その犬の)適度なスピードを考えてください。選考会の短評でも話しましたが、追及で屈折後、作業意欲が更にでてきたり、逆に薄れていったりしている状況がみられましたが、そのようなことがないように十分訓練を積む必要があります』

質問に答えて−−、
−そこまで同点だったとして、犬の進ままに四コーナーを行き失格になった場合と、指導手が誘導して完走した犬ではどちらのポイントがうえになりますか?

『答えにくい問題です。指導手の誘導はもちろん減点ですが、コーナーを過ぎてからも犬が自然にコースに戻るように訓練してください。(細かくこだわるよりもスポーツマンとしての)心構えを大切にして欲しいと思います』

−発見した時の犬の姿勢はどうでしょうか?
『オーバーランと進行方向に対する伏せの角度の許容範囲はありますが、具体的な位置と範囲はその競技会のレベルによって、審査員の裁量に任されます』
−理想とする指導手の追及方法は?
『コーナーなどは犬の後にそっくり( なぞるように) つく必要はありませんが、やはり犬の状態によって指導手が的確な判断をするようにしてください。昨日の選考会はFCI世界選手権と全く同じ厳しさで審査しました』

●服従と防衛について
『訓練の量が伴わないと結果はでないものですが、どういった点に注意して練習していったら良いかについて、話していきたいと思います。六、七年前は(日本のレベルは)ヨーロッパとは程遠い感じでしたが、今は日本の訓練技術が向上し、ヨーロッパの技術に近づき肩を並べるところまで来ています。ドイツでは訓練競技会をみる機会が日本よりも多いかも知れませんが、指導手や犬が失敗するところは同じと言えます。問題点はヨーロッパと変わりませんし、水準はヨーロッパと遜色ないレベルに近づいています』
『各課目の歩数について、初日は守られていない状況が見受けられましたが、世界レベルで判断しました。二日目になるとこれが修正されされて出場しており、情報の速さに感心しました。服従作業を待つ間には、犬にできるだけ刺激を与えないように、遊んだり褒めたりすることを極力避け、犬の意欲が自然に増していくように考えることが大切ではないでしょうか。普段の犬の訓練で時間に追われて、素早く練習に取りかかるような感じで、本番でも( 自然体で) スタートすることを心がけると良いでしょう。犬は犬、指導手は指導手。犬にとってプラス、マイナスの刺激を与えないようにします。スタートで犬を伏せさせたなら、それ以降は犬に任せます。犬の競技の流れに対する感覚を大切にしてください』
『昨日の作業では、一三番の犬( リコーvトラウムハウス) が集中力・耐久力・作業意欲が良く、精神の安定がみられ目につきました。意欲が先走る傾向があるなかで、この犬が私の思う理想的な状態に近いと思いました。犬と指導手の関係は全体的に良く、信頼関係は良くなりたっていました』


−従来、日本はジェスチャーオーバーと言われていましたが、声符・視符の動作についての感想は?
『以前のことは知りませんが、今回はそのようなことはなかったと思います。全体としてみると犬の誘導が多かったと思います。ただし、これは全世界共通のことです』
−群衆ない停座などの指導手による違いは構いませんか?
『左から八の字を描くように進入し、八の字と八の字の接点で止まるようにしましょう。課目ごとに犬を褒めることは、オーバーアクションではないので、各自褒めて構いません。基本的に問題はないのですが、審査員によっては、ほぐしのやり方を減点するかも知れません。そのため団体戦で一番のスタートは厳しいものがありますが、審査員の心理を読んで対策を講じてください。昨日の選考会での服従の全体的な傾向として、点数の中間層が少なかったのは残念でした』
『防衛作業では自らやりたいという犬が多く、ヘルパーの態度も中立的な立場で犬の見極めの目を持って作業していました。指導手の犬に対する態度としては、犬が集中しすぎてワンマンショーなってしまうと、指導手と犬の関係がみえてきません。FCIでは例えば、噛みが少し浅くとも指導手のコマンドにすぐ反応する犬の方が点数は良くなってしまいます。FCIでは噛み・監視態度・指導手に対する耳があるか、というところをみます。ただし、今回は噛みを重視しました。選考会の最後の牝(サラvHラウス)は訓練が行き届いており審査していても、これが伝わってきました。この防衛本能は生まれつきあるものですから、これを更に引き立てようとすると、かえって結果
がでない恐れがあります』

●FCI競技で重視されるポイント
『パトロールも大切です。「ヤメ」と言ったあと、袖にチョッカイを出す神経質な犬がいますが、究極的な場面では犬の性格により犬の反応が出るわけで、ある意味でしょうがないことです』
『禁足で犬が飛び上がった時に、袖に犬の鼻がぶつかっても、減点すべき問題ではないので、一回くらいでは減点しませんが、全体的な流れのなかで最後にその部分を減点の対象と判断するかもしれません。犬の表現態度、監視態度がみられれば良いわけですが、犬が吠えていても指導手に言われて吠えていたり、訓練されて人工的に吠えていると判断されれば減点となります』


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